井上 賢一さんのメッセージ

一.参加のきっかけ
私は神戸在住ですが昨年の3月まで単身で2年間岡山で生活していました。その時
知人との会話の中でこの大会があるのを知り、興味を持ちました。
もともと歩くことが苦にならない方でしたが、介護保険の被保険者証をもらう年齢となり、果たして今の自分にどれだけの体力や気力があるだろうかと確認してみたくなり、かなり迷いましたが今回参加させていただきました。

一.事前準備
これまでに年に3~4回、20km~40km程度のハイキングを楽しんでいました。その中で12時間弱の連続歩行をしたのが最長で、それ以上の長時間歩行は未知の領域でした。
ハイキングでは主にトレッキングブーツを使用していたので、少しでも100km歩行のイメージをつかもうと、新しく購入したウオーキングシューズのテストを兼ねて本番一か月前に50kmの歩行練習をしてみました。
短時間、短距離の歩行では自分の足に合っていると思える靴でも、長時間・長距離を歩いてみるとどこかに不具合の場所があるものです。それをあらかじめチェックして、できるだけの対策を講じておくのはとても大切なことだと考えています。
起伏の多いコースを選びリュックに4ℓ分の飲料水をはじめ食料など7Kg近くの物資を詰め込みトイレ休憩以外は休まず食事も歩行しながら頑張ってみました。8時間近くかかり完歩したものの想像以上に体力を消耗していることが分かります。
一般の人の歩行速度がおよそ時速4kmだと聞いたことがあります。この速度だと24時間無休息で歩き続けてもゴールに到達しないのだから完歩するのがどれだけ大変なことなのかを改めて考えさせられました。後半の50Kmが自分との勝負だと覚悟しました。

一.本番
大会当日は午前4時過ぎに神戸の自宅を車で出発。一般道を走り後楽園近くで24時間駐車場を探し、8時過ぎに無事受付を済ませることができました。
私のような年配者もけっこう参加しているのを知って一安心しました。
ちょうど集団の真ん中程の位置で10時スタート。みんなのペースの速いことに驚きました。しばらくして身体がほぐれてくると日差しが強くとても暑く感じ、この状況下では自分には少しオーバーペースかも知れないと思いながらも流れについていきました。
リュックにはレインコートに着替えの下着、タオル、夜間の反射タスキにヘッドライト、財布等、それに一番大事な500mℓのペットボトル飲料水が2本、歩きながら食べられる昼食代わりの菓子パン一袋を詰めていました。
大会のあいさつでも言っていましたが、こまめな水分補給は自分の経験からしてもとても大切です。ハイキングを始めたころは、急いでいる時には喉が乾くまで水分補給をせず、そのために途中で気分が悪くなるようなことがよくありました。今では喉の渇きを感じる前に小まめに水分補給することでそのような経験をすることがなくなったので水分を切らさないように注意し、ペットボトルが1本になると自販機やコンビニなどで早めに補給するように努めました。今回は何か所かでペットボトルなどの飲み物を補給していただきとても助かりました。
神戸からの一人参加で伴走者も話し相手もいませんでした。自分のペースで歩くのが一番楽なので苦にはなりませんでしたが、予想以上の暑さには閉口しました。それでも風景を楽しんだり、川沿いではどんな生き物が棲んでいるのかと川面を覗き込んだりしながらペースを一定に保ちました。
上り坂はあまり苦にならずペースは落ちませんでしたが備前体育館が近づくにつれ疲労感が強くなって来ました。太陽がいつまでも沈まず、やはり暑さがこたえました。
備前体育館に到着しトイレを借りただけで休憩なしで伊理漁協に向けてすぐに出発しました。道のり半分51.2Kmの伊理漁港には18時28分到着。
ここで初めて炊き出しをいただくために休憩をとりました。温泉卵入りのうどんがとても美味しかった。卵やおにぎりをいただきいよいよ未知の領域、後半50kmに挑戦するぞと気持ちを改め閑谷に向け出発しましたが、最初の道路の分岐点でどちらに進めばいいのか分からず、行ったり戻ったり地図を確認したりと10分近くもたもたしてしまいました。
思えば現役で働いているため、事前説明会に都合がつかず、もちろんコース下見もできていませんでした。
幸いにもゼッケンを付けた方が後ろから来られ、親切に閑谷トンネルを抜けるまで同行していただくことができ、道に迷わずに済みました。夜になり、他にゼッケンを付けた人とも会うことがないような状況になっていたので本当に助かりました。
61Km付近で炊き出しなどをたっぷりご馳走になり、ここでもおにぎりを包んでいただいて次のチェックポイントへ出発しました。ここからリバーサイドまでは3人組の先行者がおり、ほぼ同じペースで歩かれていたので見失わないように後についていきました。
リバーサイドではトン汁をいただきましたが、61km付近の炊き出し所と同様椅子に座らず立ったままいただきました。これまでのハイキングなどで疲労が溜まっている時にしばらく座ったり、長時間立ち止まったりした後に、急に大きな負荷を脚にかけると脚がつってしまうことを幾度が経験していました。脚がつらなくてもそれまでのペースに戻すのに時間がかかってしまうことがありました。今大会では信号待ちの時も足踏みしたり、ストレッチするなどを徹底しました。
過去に脚がつってしまった時は、歩く都度激痛に襲われましたが、我慢して足を進めていると突然電撃が走ったように感じた後、急に痛みが無くなりそれまでより軽快に歩けるようになるのが常でした(これは私の経験であり科学的根拠をもったものではありません。他の人からも同じような話をよく聞くのですが、無理をしてかえって悪くなることも考えられますので過信は禁物だと思います)。
今回も後半のどこかで脚がつるだろうと覚悟していましたが対処できる自信があったのでペースが落ちないように気をつけました。さすがに終盤は足に力が入らなくなりましたが、脚の障害も起きず無事ゴールできました。
リバーサイドからは長い一人旅でゴールまでの間に3名のチャレンジャーとすれ違ったのみでした。昼間のように景色も見渡すことができず気を紛らわすため、岡山(倉敷)暮らしで仕事が終わってから、雪の日でも夜間に自宅周辺を1~2時間よくウォーキングしたことを懐かしく想い出しました。
夜に入ってからは暑さが和らぎ、冷え込みもなく睡魔に襲われることもなく疲労感の割には快適に歩けました。
ゴールでは預けていた荷物を受け取り実行委員やサポーターの方にお礼を述べ後楽園を後にしました。居眠り運転をしやすい高速道路を避け一般道で無事6時に神戸の自宅に帰り着くことができました。疲労のためにさすがに車から降りるときに足を出すのに手間取りました。

一.本番を終えて
大会への参加目的は人それぞれだと思います。
時間目標をもって完歩を目指す人がほとんどだと思います。そして目標を達成できた人、残念ながらできなかった人。
でも準備を含めこの大会に参加して(自分を今までより成長させる)何を得たかが一番大切なもののような気がします。
私の目的は「体力や気力の確認」でしたが、考えて見れば事前説明会に参加できず、コースの下見さえもできなかった私が大きなトラブルもなく完歩できたのも多くの方々が支えて下さった大会が存在して初めて実現できたものだと思っています。
実行委員会を立ち上げ、チャレンジャーが安全で快適に歩行できるようなコースを準備する。そのための下調査、折衝、人員の配置、チャレンジャーやサポーター、ボランティアの募集、事前説明会、パンフレットの作成………、数え上げればきりが無いほどのご苦労があったことは容易に察しがつきます。きっとサポーターやボランティアの皆さんの長時間にわたる献身や気遣いも、違った点でチャレンジャーよりも心身共に大変なものがあったに違いありません(疲れている時でも励ましの言葉をいただいた時にはできるだけ元気な声で「ありがとう」の言葉をかえすようにしました)。
他の大会参加者の皆さんの感想と同じように、直接大会の成功のために携わった多くの方々の善意と、見えないところで支えられての完歩であったと思います。
神戸へ戻る自動車の中ではそんなことを考えながらの運転でした。
今回の大会への参加が、そう実感できる自分に成長させてくれました。

No.270 井上 賢一