「高校生の彼に感謝。」鉄谷稔

「リュックのファスナーが開きかけてますよ」と優しそうな彼が声をかけてくれたのは出発してから2時間程だっただろうか。礼を言いファスナーを閉め直し、せっかくなのでしばらく一緒に歩くことにした。

聞けばなんと高校3年生!(こちらはその3倍以上の歳なんだよな)しかもこの100キロ歩行を楽しみにしていて、毎日のように10キロを歩いていたとのこと。変わり者扱いされなかったのか?要らぬ心配をしてしまった。

こりゃ体力的に後をついて行くのは無理だろうなぁ、と。
ならば行けるところまでしばらくは引っ張ってもらおうと方針を決め、話をしながら並走ならぬ並歩・追歩である。

聞けば何度かチャレンジしていて、今回下見もしたらしい。どおりでコースもよく知っている。こりゃラッキー!
ただ、一人で参加するのは初めてとのこと。これまでは家族で、主に母親と参加だったらしい。家族愛を感じるナァ。
この100キロ歩行が終われば受験勉強に本腰らしい。頑張れ~。

平地はまだいい、うん、なんとか一緒に歩ける。彼についていける。きっついのは峠越え(神社の坂道がヤバいってこれかぁ?)。コース作った人はマジにSッ気ありだよ。

この地獄を共に乗り越え、やがて漁港辺りから夜間歩行に突入である。

夜間にこんな感じで歩くことなんてそう無いだろうな、と思いながら閑谷学校、リバーサイド和気、磐梨中学校でのありがたい炊き出しをいただく。全部おいしくいただきました。しみるなぁ。ごちそうさまです。

いつの頃からか、高校生の彼の調子がおかしい。
ま、100キロも歩く長丁場なんだから足だって痛くもなる。筋肉が悲鳴を上げる。彼の休憩が少しづつ長く、多くなっていった。
彼の背負ってる荷物が少し重いか?

荷物の重量は完歩に影響するんじゃないか?と思い至り、私は自分の荷物を作るときには天気予報等をチェック、そのうえで食べ物、防寒着等の荷物を減らし、リュック重さ控えめにした。ま、ちょっとした賭けではあった。実際ちょっと寒かったし。

こちらは日頃の運動がものを言っているのか、リュックの重量が良かったのかまだ大丈夫。(きっと両方重要)いや、もちろん疲れはずっとピーク状態なんだけど。

しかし、彼が一緒に歩いてくれたおかげでここまでこれた。真っ暗な河川敷も楽しく歩けた。一人で無言歩行だったらきっと寂しかっただろう。こうなったらもう同志だよ。一緒にゴールしよう。タイムレースでもないし。

気温も上がり始めたもうすぐ午前9時。2人そろって無事に完歩。
いやぁよく歩いた。足が痛いしかなり汗くさい。風呂に入りたい。
足の裏を見るのが怖い(笑)。ビールが飲みたい。

道中を思い出している今、開催してくれた実行委員会の方々や、随所にあふれたスタッフの励ましや声掛けに感謝。沿道で応援してくれた方々にも感動と感謝。

そしてそして、高校生の彼に感謝ただただ感謝。あっという間の100キロ歩行だった。(そんなわけないか)そして、彼がいてくれたおかげで一味も二味も違う100キロ歩行になったのは間違いない。

来年も参加するかどうかはその時ゆっくり考えて、自分の心の声を聴いて決めることにします。
そして、彼とは縁があったらまたいつか会えるかなと楽しみにしています。

鉄谷稔

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次