「自分を超えた~!」湯木 徹

心地よい筋肉痛とともに、一昨日行われた「岡山24時間100キロ歩行」を思い出している。

昨年に続いて2回目となった今回は、「昨年の自分を超える!」を目標に挑戦した。
昨年の反省を基に、リュックサックは背中・肩にあたる箇所が出来るだけ柔らかい物、靴はランニングに特化したシューズではなくて普段履きで、携行品は少量化と軽量化を重視する事にした。
また、今回は、20キロではあったが、スプリットタイムで1キロ11分代をベースに歩行練習もした。練習を通して、少し頑張ればキロ10分10秒くらいで行ける事や12分ペースなら楽に歩行できる事なども確認できた。ランニングに比べて、2分の1程度と言う歩行のスローペースに慣れる事が出来たのも練習の成果だった。
前日は、往復4時間の移動時間プラス24時間の歩行と言う、とてつもない負担に備えて早めに床に就くことにした。
しかし、思いとは裏腹に興奮して眠れず、眠りも浅いまま朝を迎え、2時間近くかけて会場に到着した。チャレンジャーは誰も来ていない中、大勢の大会関係者の皆さんが本部テントの前に集まり、ミーティング。そして、各々が気合を入れるかのような声出しと拍手。
我々の100キロ歩行が、何事もなく安全に終われるのも大勢の皆様のお力があればこそと、感謝の気持ちでいっぱいになった。

来賓、実行委員長、審判長のユーモアセンスのある語りを聞いたり、チャレンジャーの
決意表明を聞いたりしていたら、スタートの時間が刻々と迫ってきた。
最初のスタートは親子。子どもさんにとっては、親と共有する時間や苦痛、そしてその先に待っているゴールの喜びは得難い経験になると思った。
いよいよ、スタートの10時10秒前になり、カウントダウンが始まった。
昨年の反省から、今回は出来るだけ前で出発しようと、スタートゲートに出来るだけ近いところに位置した。
「5,4,3,2,1、バーン。」「いよいよ、これからだ。」高鳴る思いを胸に最初の一歩を力強く踏み出した。
スタートから続く長い河川敷で確認したら、前に位置取りしたつもりだったが、前列はずっと前。しかし、追い越すことが困難な程の狭いコース。橋下の景気づけの太鼓に元気をもらいひたすら歩き続ける。昨年は、この辺りの空に虹がかかっていたのを思い出しながら。
河川敷が終わって土手を歩いた後、町中に入る。最初のセブンを通過し、しばらく歩くと、イチゴのふるまい。果汁の甘さが口の中一杯に広がる。
昨年は、後方に位置していたので、チャレンジャーとの会話を楽しみむ事も出来たが、今回は、会話もなく黙々と歩みを進める。
1キロのスピリットタイムキロを12分で、10キロ2時間を目標にランニングウォッチでスピードと経過時間を確認しながら前へ前へと進んでいく。目標よりも速い時は、後半への貯金のつもりで、ハイペースを維持し続けた。
そして、お待ちかねの卵ご飯会場の備前中学校に到着。時間は、18時30分。昨年は、暗くなって到着し、電飾をまとったワンちゃんが出迎えてくれたが、時間的に早かったからか出迎えはなかった。
笑顔とともに提供していただいた卵ご飯とゆで卵を一気に平らげ、ブルーシートに移動し、防寒用の服装に着替えて歩き出す。
栄養補給をしたおかげか、歩みが早くなったように感じながら、暗い夜に向けて歩き続けた。
次第にライトなしには足元が見えないくらいに暗くなり、チャレンジャーのリュックにつけたバッジの灯りを手掛かりにコース確認をしながら前進していく。
星空の下、5,6人が一列に並んで無言で歩くと自然に一体感が生まれ、非日常体験をしている感動で胸がいっぱいになる。
背中に汗を感じるくらいの速足に、着込んだベストを脱ぎたくなるが、我慢して先へと進んで行く。時々猛スピードで車が横を通り過ぎて行くので、隊列を崩すわけにはいかない。
深夜に近づくにつれて気温も下がり、防寒対策をして正解だったと思う頃、トンネルに入る。どこまでも続くのかと思う位長い。行けども、行けども先が見えない。ひたすらに出口を求めて歩く。
やっと、抜け出た先には、豚汁のもてなしが待っていた。くたびれ切って机に伏せている人。足をさすりながら、筋肉をほぐしている人。食べると直ぐに歩き出す人。チャレンジャウォチングをしながら、熱々の豚汁をフーフーいいながらいただく。
再び歩き出したが、山道での一人旅がしばらく続く。前後の確認をするが、チャレンジャーの姿を目視する事は出来ない。時折、道路脇の茂みから獣の鳴き声の様な物や、ガードレールに物が当たったのか金属音も聞こえる。お気に入りの曲を聴きながら、気を紛らわす。
仲間に追いつこうと、ペースを上げる事30分。やっと、リュック後方につけたバッジの瞬きが見えはじめホッとする。
山道を終わり延々と続くコースにうんざりし始めた時、前方に煌々と光る場所が目に飛び込んできて、自然と足取りに力強さが戻る。77.5キロ地点にある炊き出し場所である。そこで、うどんを食べる。足・腰の痛みが普通ではない。座り込んだら立てないくらい疲労困憊し、身体が悲鳴を上げているのが分かる。
でも、時間は待ってはくれない。この調子でいくと5時代ゴールも出来るかもと、重い体を奮い立たせてゴールに向けて歩き始める。
疲れも最高潮になった頃、神社前に開設された私設の賄い所で、最高の笑顔と、美味しいおにぎり、コーラをいただき、エアーサロンパスまで振りかけてもらい再び歩きだす。
残り15キロになる頃、夜も白んでくる。5時代を目指していたが、全くペースが上がらない、それどころか徐々にダウン。景気づけに音楽を聴く。歩道脇の満開のツツジが励ましてくれている様に感じるが、それでも歩みは遅くなり次々と抜かれていく。付いて行こうとするが、体がいう事を聞いてくれない。
ゴール手前8キロの地点で、他のチャレンジャーと意気投合。両足の皮がずるむげ状態で歩いていると言う男性。それに対して、親指の爪が剥がれかけているのではないかと言う私。会話が続く。話をしながら歩くと気分も紛れ、ゴールまで2キロ。走ったら10分少々の距離が、30分かけても終わらない。

遠い先のゴールで手を振って応援してくれるスタッフの皆さんの姿に、力をもらいながら前へ前へと進む。
ついに!ついに!赤い絨毯の先のゲートに張られたテープを両手を挙げて切る。ゴール!
やっと終わった。完歩証明書の「途中ふさがる険しい峠や困難道のり、そして疲労と苦痛。あきらめずに一歩一歩と前進し、ついにゴールにたどり着きました。」の文面が読み上げられ、ゴール時間20時間48分14秒のゴール時間を確認したら、「昨年の自分を超えた!」「あきらめずに歩きぬいた!」との思いで自然と目頭が熱くなった。
スタッフの皆さん、本当にありがとうございました。
来年も「今年の自分を超える!」を目標にエントリーします。

湯木 徹

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